へっぽこ社会人4年生がプログラミングを頑張る

へっぽこ社会人4年目がプログラミング系統を中心に書きたいことをつらつらと書きます

DojoCon Japan 2019 参加レポート Part 2

DojoCon Japan 2019 参加レポート Part 1に引き続き、DojoCon Japan 2019の参加レポートを書いていきます。参加から日が経ってしまい、頭から抜けていることもありますが、当日のメモと自分の記憶を頼りに書き起こしていこうと思います。

プログラミングコンテスト プレゼンテーション

Keynote が終わると、コンテスト応募作品のうち、一次審査に通過した作品のプレゼンテーションが最終審査として行われました。今回のコンテストでは、6名の子供の作品が一次審査を通過し、最終審査のプレゼンテーションを行いました。最終審査を通過した子供には、アイルランドで開催されるCoderDojo主催の Coolest Projects International への参加費用が補助されます。

最終審査では、作品を作った子供自身が作品のコンセプトや作成に至った動機などのプレゼンテーションを行いました。また、動作のデモも行い、どのように動作するかの紹介も行っておりました。どの作品も、DojoCon 2019の掲げるテーマ「つぎのSTEP」に沿うものでした。セッションの様子は こちら から閲覧できます。

作品概要

一次審査を通過し、最終審査でプレゼンテーションを行った作品は以下の6作品です。

  1. パパふとらないでねー

    父親の肥満を心配した子供が、つまみ食いなどの防止のために作成した作品です。Micro:bit のを冷蔵庫に取り付け開閉をセンサで感知してScratchの画面にメッセージを表示します。表示されるメッセージは朝、昼、夜でそれぞれ3種類あるとのことです。お父さん、ダイエット頑張れ!w

  2. らん♪RUNランニング

    運動会のリレーの選手に選出されなかった子供が、来年の運動会のリレーの選手として選出されるために、自身でトレーニング管理ツールを作成しました。既に公園などでトレーニングはしているものの、雨天時は外でトレーニングが出来ないので、家で楽しくトレーニングを行うためにトレーニング管理ツールを作成したとのことでした。Micro:bitで体の動きをセンサで取得し、動いた分だけおとぎ話の世界のキャラクターが動かせるというものでした。

  3. 未来の月面調査ロボット

    宇宙探査に興味を持つ子供が、宇宙兄弟の世界を再現して作成した作品です。地球から国際宇宙ステーション経由で月面のロボットに信号を送り、操縦するというものでした。デモンストレーションでは、地球側のコントローラ、信号の中継役の国際宇宙ステーション、月面探査を行うロボットをそれぞれ用意し、宇宙ステーションを経由してロボットを操作していました。

  4. LOST

    色や動作などを失ったScratchの世界のキャラクターが、失ったプログラムの断片を集めることで、徐々に失ったものを取り戻していくというコンセプトの作品です。ゲーム自体が失ったパーツを取り戻すことで徐々に成長していくさまを表しているとのことです。

  5. 新感覚パズルゲーム コンビ!

    2人プレイで交互に1マスずつ進みながらゴールを目指すというゲームの作品です。このゲームはどちらが先にゴールに着くかを競うゲームではなく、互いに協力し、移動したマスの効果を有効活用してゴールを目指すというゲームです。1人でプレイする分には簡単でも、2人プレイでクリアするためには、お互いの協力プレイが重要となるようです。

  6. AI Trash Can

    AIにゴミの種別を判定させ、その種別にあったゴミ箱の蓋を開くシステムの作品です。昨今ゴミを分別し、資源の再利用や再使用が謳われていますが、そのためには人間が自身でゴミの種類をきちんとしなければなりません。AIによって分別を自動で行ってくれれば、人間が自身でゴミの分別を行う手間が省けそうです。

一次審査通過作品については、DojoCon 2019のお知らせページに作者による概要も掲載されています。

所感

お世辞抜きに、本当にレベルの高い作品ばかりでした。プレゼンテーションを聞く前は、どんな感じで発表するんだろうと、軽い興味のレベル(かなり上から目線)でしたが、実際にプレゼンテーションを聞いたらレベルの高さに驚愕させられました。単純に子供の無邪気さが面白いというだけでなく、作品がしっかりテーマを持っているところに、レベルの高さがあったように思います。トップバッターの子の発表が非常に面白く、その後の子供達の発表、プレッシャーだろうなぁとか思っていましたが、決してそのような感じではなく、自分の作ったものを、自分の発表したいように発表していたので、どの発表も楽しく聞けました。特に、 身近な問題を見つけてくる着眼点 と、その問題を解決するソリューションの発想力 が面白く感じました。

今回の発表では、子供自身の身近な問題を見つけ、それに対するソリューションを考え、プログラミングして実現するといった取り組みがしっかり出来ていることに感動しました。意外と大人でも身近な問題を見つけ、解決手段を考えることは難しいのではないかと思います。大人になっていくにつれて常識に縛られていくので、「そういうものだ」と思うことが多くなると、身近な問題として見つけることが困難になるように感じます。

杞憂かもしれませんが、あえて1つ 個人的に思う 不安な要素を挙げるとしたら、コンテストに出場した子供達が、将来的に 自分のやりたいことのためでなく、回りの大人達の顔色を窺って行動するようになってしまわないか 、ということです。規模が大きい分、今後の人生において、本当に自分のやりたいことではなく、回りの大人達の機嫌を窺うことに注力してしまわないかと思う面が私の中にあるのかもしれません。

子供達にとって、回りの大人達というものは、おそらく大人達が思っている以上に大きい存在だと思います。おそらく大半の子供達にとって、 親や学校の先生の言うことは絶対的 で、不満があっても逆らえないことが多いのではないでしょうか。特に年齢が幼いほど、大人の言うことは絶対に正しいと思うのではないでしょうか。少なくとも、自分が子供の頃はそのように感じていました。 (正直、高校まで自分がどのような感じだったか、だいぶ忘れてしまいましたが...)

今回のコンテストの最終審査を受けた子供達にとって、この経験は少なからず影響を与えるでしょう。その影響が、さらに自分のやりたいことを追究する原動力になってくれることを切に願います。

CoderDojo 豊橋と小中高大連携

豊橋創造大学教授の今井 正文氏による「 学生プロジェクト「CoderDojo豊橋」と小中高大連携 」という題目の発表でした。セッションの様子は こちら から閲覧できます。

今井氏のゼミプロジェクトでは、2020年度からの小学校でのプログラミング教育必修化に先駆け、2016年度からHour of Code 豊橋やCoderDojo豊橋を開催し、小中高生がプログラミングを学ぶ機会を提供しており、子供のプログラミング学習に貢献されています。

学校でプログラミング教育を行う際に、USBの使用が禁止されているような場合には、PCにインストールを行わない Hour of CodeMicro:bit の方が適しているとのことでした。また、教育の現場に取り入れるためには、教育委員会で議論する必要がありますが、教材などの実績を示す必要があります。例えば、Hour of Code とは、アメリカの非営利団体 Code.org が提案するプログラミング教育活動で、 1時間 でコンピュータ・サイエンスを学ぶチュートリアルが用意されています。ただし、教材費用の問題もあり、教育委員会だけ通れば良いというわけでなく、公聴会もクリアしなければならず、学校でのプログラミング教育の提案も簡単ではないようです。

大学の活動の一環として子供にプログラミングを教える際に、教える側の人はプログラミングに詳しい人より、そこまで詳しくない人の方が子供達に受けが良いらしいです。ゼミ生が子供達にプログラミングを教える際にも、プログラミングに詳しい人より、軽いノリの人の方が子供に受けが良かったらしく、教えることの難しさを考えさせられました。

プログラミング教育の制度と理論

高校で情報科の非常勤講師を勤められている太田 剛氏による「 メンターのためのプログラミング教育の制度と理論 」という題目の発表でした。セッションの様子は こちら から閲覧できます。

太田氏はCoderDojo市川真間のチャンピオンとしてCoderDojoの活動に寄与されています。

2016年4月より、政府が第4次産業革命やSociety 5.0に対応した人材の育成を掲げ、プログラミング教育の導入を決定しました。現在、ビッグデータの分析やAIの活用への取り組みが注目されています。マイケル・A・オズボーン氏による「雇用の未来」という著書では、AI時代には現在存在している仕事のおよそ半分がAIに取って置き換えられることが記されています。この内容が一人歩きしてしまっていると述べられていました。

2020年から、生徒の主体的な学びが求められるようになっています。しかし、先生が主導で生徒に主体的な学びを求めるという矛盾が発生しているとのことです。従来の教育モデルでは、先生は主に授業中に頑張って一斉授業を行ってきました。これからは授業中は生徒主導で互いに学び合いのモデルになっていくとのことです。先生の役割も、授業中は生徒のアクティブラーニングの補助をし、授業前の準備と授業後の評価をメインに頑張るモデルに変わっていくようです。

小学校でプログラミング教育が始まるにあたり、プログラミング教育のあり方が議論されています。プログラミング教育ということで、コーディングを教えるというイメージがありますが、 プログラミング的思考 を育てることが目的であり、コーディングを覚えることが目的ではありません。しかし、コーディングを覚えることが目的でないということが、コンピュータを使う必要がないと誤って解釈されていることもあり、アンプラグド問題と言われているようです。

学校などで目標とする領域と、なりたいモデル、つまり成熟しつつある領域には差があり、その差は最近接発達領域(ZPD:Zone of Proximal Development)と呼ばれるようです。CoderDojoはZPDを支援する役割を果たすと述べられていました。CoderDojoでは、みんなで考え作っていく場で、すごい子に憧れる場です。メンターは子供のプログラミングを補助する役割で、従来の先生の教育モデルとは異なり、自発的な学びを支援します。子供が主体的に学ぶ場を提供する役割が、今後CoderDojoだけでなく、学校にも求められそうです。そして、CoderDojoに求められる役割も変化していくのかもしれませんね。

まとめ

コンテストの最終審査では、子供達がハイレベルな発表をしていたことに驚かされました。どのような動機で、どのようなテーマで、何を作ったかを、大人に用意してもらった台詞ではなく、自分の言葉でしっかり発表しているように見受けられました。おそらく、大人であっても、前に立って自分の言葉で発表するといったことは、決して簡単なことではないと思われるので、楽しそうに発表している姿はうらやましく感じました。

自分の身近な問題を見つけ、解決のアプローチを考え、実現する ということを子供達が自身で実行出来ていることにも非常に驚かされました。身近な問題を見つけること自体が決して簡単なことではないので、着眼点に驚かされ、さらに解決策を考える発想力にも驚かされました。私自身は、子供の頃も大して身近な問題を見つける着眼点も、問題を解決する柔軟な発想力も持ち合わせていなかったので、どのように面白い着眼点や発想力を持てるのか興味がわきました。

午前中のセッションは、大学の活動の一環としての小中高との連携に関する活動の概要と、プログラミング教育の制度と理論について聴講しました。2020年から小学校でプログラミング教育が必修化となることもあり、プログラミング教育に関心がもたれていますが、教育の現場でどのように進めていくかはまだ試行錯誤をして、ノウハウを蓄積する必要がありそうだと感じました。

国としては、コーディングを教えることが目的ではなく、 プログラミング的思考 を育むことが目的としていますが、しっかりとした理解や認知が広くされていないのではないかと感じます。小学校でのプログラミング教育必修化が決まってから、習い事の1つとしてプログラミング教室が広く開催されるようになりましたが、おそらく大人は、コーディングを教えることがプログラミング教育だと考えているのではないでしょうか。(私も同様にコーディングを教えることだと思っていました...)

一般的に考えられているプログラミング教育と、国が掲げるプログラミング教育の像に大きな解離があるのではないかと思います。プログラミング教育を通じて達成したい目標は何か、どのような手段で達成するかをしっかり理解し、さらに周知する必要がありそうです。


Part 3 に続きます。今回で午前の部が終わりました。非常に内容の濃い午前の部でした。次回で午後の部を書き切ってしまいたいと思いますが、記事の分量で調整予定です。

謝辞 (2020/2/7 追記)

各セッションの動画がYouTubeに公開されたことを 安川要平 様より教えていただきましたので、それぞれのセッションに動画へのリンクを追記しました。この場をお借りして御礼申し上げます。